こんにちは。販促コンサルタントのRyoukanです。
前回、利益率を最大化させるために「特上・定番・据置」という3段構えの価格戦略をお伝えしました。しかし、メニュー表にただ「特上:15,000円」と書くだけでは、お客様の心は動きません。
高い料金を支払う際、お客様は常に「自分を納得させる理由」を探しています。その理由を、提供者側が言葉にして差し出す。それが「ネーミング」の役割です。
私が当時、最上位のC料金(特上)に授けた名前。それは……
「八戸尽くし海の幸盛り合わせ」でした。

「形容詞」は疑われ、「名詞」は信じられる
販促の現場でありがちな失敗は、「豪華な」「新鮮な」「美味しい」といった形容詞を並べてしまうことです。実は、これらの言葉は広告慣れしたお客様の心には響きません。なぜなら、これらは作り手の「主観」であり、客観的な証拠がないからです。
一方で、「八戸尽くし」という言葉はどうでしょうか。これは「八戸という土地の恵みを、これでもかと盛り込んだ」という事実(シーズ)を指しています。
お客様の心理としては、「せっかく八戸に来たのだから、ここの名物を残さず食べたい。これを選べば間違いなさそうだ」というものを探しています。
「特上」という言葉は比較の尺度(ランク)でしかありませんが、「八戸尽くし」は体験の質(ストーリー)を表します。ネーミングを形容詞から名詞(固有名詞や地名)に変えるだけで、価格への抵抗感は驚くほど消えていくのです。

「シーズ」を「ニーズ」に翻訳する作業
私が販促の企画を立てる際、常に意識しているのは「経営者の意図(シーズ)とお客様の視点(ニーズ)を戦わせる」ことです。
経営側のシーズ◆「地元の良い食材を仕入れている。原価も高い。だから高く売りたい」
顧客側のニーズ◆「失敗したくない。その土地ならではの贅沢を味わいたい」
この両者がガッチリと握手する接点が「八戸尽くし」という言葉でした。
「高く売りたい」という経営側のエゴを、「旅の目的を果たしたい」という顧客の欲求への「解決策」に翻訳したわけです。
名前が決まれば、デザインはほぼ終わったようなもの
私は、マーケティングの戦略(誰に、いくらで、何を売るか)と、デザイン(どう見せるか)を切り離しません。
「八戸尽くし海の幸盛り合わせ」という名前が決まった瞬間、私の頭の中には完成したチラシのレイアウトが浮かんでいます。
八戸の荒波をイメージした書体、シズル感たっぷりの刺身の写真、そしてその横に添える「地元漁師のこだわり」という一筆。
ネーミングが決まるということは、「売れるロジック」が決まるということです。ロジックが決まれば、デザインに迷いは生じません。だから、私は瞬時にツールのイメージを作ることができるのです。

言葉一つで「選ばれる理由」を作る
もし、あなたの宿やお店に「なかなか売れない高単価商品」があるなら、その名前に「シーズ(事実)」が盛り込まれているか確認してみてください。
「店主おまかせコース」を「〇〇港直送、朝獲れ鮮魚のフルコース」に変えるだけで、それは単なる料理から、お客様が憧れる「体験」へと変わります。
さて、戦略が決まり、ネーミングが決まりました。次はそれをどうやって「形」にするかです。次回は、私が現場で実践している「即席デザイン術」の裏側を公開します。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
日々のおもてなし、本当にご苦労さまです。
あなたの宿が、たくさんの出会いと再会に満ちた「千客万来のお宿」になりますように。
どうぞご自愛のうえ、これからも素敵なお宿づくりを続けてください。

