販促室から見た経営の視点2
現場で見た「料理長の葛藤」
私がリゾートホテルで販促に関わっていた頃、料理の原価率は常に大きなテーマでした。
料理長は「お客様に満足いただける味と見た目を提供する」ことを第一に考えていましたが、同時に「原価を抑える」という経営的なプレッシャーにも直面していました。
特に季節の宿泊プランや歓送迎会のチラシやパンフレットに載せる料理は、写真映えを重視します。ボリューム感や華やかさを演出するために、どうしても原価率の計算が後回しになることが多かったのです。
さらに、繁忙期になると仕入れや在庫管理まで手が回らず、「とりあえず多めに仕入れる」「余ったら翌日に回す」といった対応になりがちでした。結果として、廃棄やロスが出て、気づけば原価率がじわじわ上がってしまう。そんな場面を何度も見てきました。

経営視点で見た「原価管理の盲点」
料理長や調理スタッフは、どうしても「目の前のお客様の満足」を優先します。それ自体は正しい姿勢ですが、経営としては「全体の収益バランス」を見る必要があります。
私が学んだのは、料理の原価率は一皿ごとではなく、年間を通じて全体でコントロールする視点が大切だということです。
- 季節のプランでは多少原価が高くても「集客の目玉」として許容する。
- 代わりに、年間を通じて提供する定番料理で原価率を下げる。
- 廃棄やロスを防ぐため、仕入れ・在庫を管理する人を料理長とは別に立てる。
実際、私が勤めていたホテルでも、仕入れや在庫管理を任せる先任者を置いたことで、数字が安定し、料理長は「お客様に喜ばれる料理づくり」に集中できるようになりました。

小規模宿泊施設でできる工夫
規模の小さい旅館やホテルでは、専任の仕入れ担当を置くことは難しいかもしれません。それでも、次のような工夫で原価率をコントロールできます。
1. 年間視点での原価計画を立てる
- 春・秋など繁忙期は多少華やかに
- 閑散期や平日はシンプルで効率的に
→ 年間で平均したときに、目標の原価率に収まれば良い。
2. メニューを「見せる料理」と「稼ぐ料理」に分ける
- 写真に使う華やかな料理=見せる料理(やや高コストでもOK)
- 定番や朝食メニュー=稼ぐ料理(低コストで安定)
- 特に朝食は数が多いですから、厳密な管理と工夫によりコスト改善ができます。
→ トータルでバランスをとる。

3. 仕入れと在庫を「数字」で見る
- 仕入れ金額と売上を毎月シンプルに集計する
- 廃棄量や余剰食材もメモに残す
→ 感覚ではなく、数字でチェックする習慣をつける。
4. 地元食材を上手に使う
- 地元の旬の野菜や魚は安価で新鮮
- 「地域らしさ」を打ち出すことで付加価値にもつながる
まとめ
料理の原価率は、料理長だけに任せるとどうしても「目の前のお客様重視」で偏りがちです。経営者としては、
- 年間を通じた視点でコントロールする
- 廃棄・ロスを減らす仕組みをつくる
- 華やかさと収益性のバランスをとる
この3つを意識することで、無理のない原価率管理ができます。
料理は宿の魅力を決める大きな要素ですが、同時に経営の柱でもあります。小規模宿泊施設だからこそ、シンプルなルールと仕組みで「無理のない原価コントロール」を取り入れてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
日々のおもてなし、本当にご苦労さまです。
どうぞご自愛のうえ、これからも素敵なお宿づくりを続けてください。
皆さまの宿が、たくさんの笑顔と再会に満ちた「千客万来のお宿」になりますように。

