販促室の現場シリーズ5★営業活動の視点
全員参加のポスティング活動――地域のお客様と顔の見える関係をつくる
ホテルや旅館の営業活動というと、企業への訪問や旅行会社への案内、
宿泊プランの販売などを思い浮かべるかもしれません。
しかし、足元にある地域のお客様との関係づくりも、大切な営業活動です。
今回は、以前私がお世話になったホテルで取り組んだ「全員参加のポスティング活動」を
通して、地域との交流と、スタッフの営業意識について考えてみたいと思います。
ホテルの誕生日に、地域の方々へ感謝を届ける
そのホテルでは、周年記念日を中心とした数日間を「ホテル誕生感謝祭」と銘打ち、
宿泊やレストランでの会食、お風呂の利用などに割引特典を設けていました。
日頃お世話になっているお客様への還元企画で、主な対象は、ホテルのある地域と
その周辺にお住まいの方々です。
告知方法はシンプルでした。販促室で準備したチラシのポスティング、館内ポスター、
ホームページやSNSでの案内です。
中でも印象に残っているのが、全館を挙げて行ったポスティング活動でした。

営業部だけに任せず、他の部署も参加する
対象地域をいくつかのエリアに分け、営業部が中心となって担当者を割り振ります。
そして、担当するエリアへ一斉にチラシを届けに出かけました。
参加するのは営業部のスタッフだけではありません。料飲部や調理部などからも、
業務の調整がつくスタッフに参加してもらいました。
普段はレストランで接客する人も、厨房で料理を作る人も、この日はホテルの案内役になります。
私が販促室に勤務する前には行っていなかった活動でしたが、地域の方々との交流と、
スタッフ全員が営業活動に関わる機会をつくることには意味があると考え、計画して
実践しました。
目的の中心は、地域の方々と仲良くなること。そして、営業活動を全スタッフにとって
身近なものにすることでした。
もちろん販売促進の狙いもありますが、それは地域との関係づくりの先にあるものと
考えていました。

チラシを届けることが、あいさつのきっかけになる
各家庭を訪ねると、留守のお宅ばかりではありません。玄関先や庭先で、その家の方と
顔を合わせることもあります。
そんなときは、チラシをお渡ししながら、ひと言ごあいさつします。
「いつもお世話になっております。今度、ホテルの誕生感謝祭を行いますので、
よろしければお越しください。」
長い説明をする必要はありません。ホテルのスタッフとして顔を見せ、感謝の気持ちと
ご案内を届ける。それだけでも、小さな交流が生まれます。
ホームページやSNSで情報を届けることに加えて、直接あいさつを交わすことで、ホテルを
身近に感じていただくきっかけになります。

地元のお客様は、営業活動の大きな柱
宿泊のお客様は、全国からお迎えします。一方、冠婚葬祭やレストランでの会食、お風呂の
利用などは、地元のお客様が中心になります。
特にホテルの周辺にお住まいの方々は、家族の食事やお祝い、親戚の集まりなど、
さまざまな場面で利用してくださる可能性があります。
遠方からのお客様を増やす取り組みとともに、近くのお客様から「何かあったら、あのホテルへ」と
思い出していただける関係を育てることも欠かせません。
誕生感謝祭は、その関係を深めるよい機会でした。
感謝祭の期間中は、地域のお客様でにぎわいました。
割引特典が来館の理由になっていたことは間違いありません。
ただ、あいさつを兼ねて一軒一軒訪ねたことも、来館を後押ししたのではないかと思います。
それぞれの効果を厳密に分けることはできませんが、地域の方々と直接接点を持つ
活動の大切さを感じました。
スタッフにとっても、お客様を知る機会になる
この活動には、スタッフ側にも意味があります。
普段、館内でお客様を迎えているスタッフが地域を歩くと、ホテルの周りにどんな暮らしがあり、
どんな方々が住んでいるのかを知る機会になります。
また、自分で感謝祭をご案内することで、企画の内容を理解し、お客様を迎える意識も高まります。
「お客様に来ていただくために、自分にもできることがある。」
そう感じる経験は、日々の接客や料理づくりにもつながるはずです。
営業部が中心となりながら、他の部署も参加する。
そこに、全員参加で取り組む価値があります。

販促室は、地域とスタッフが出会う機会をつくる
販促室の役割は、チラシやポスターを制作することにとどまりません。
誰に届けるのか、どのように案内するのか、スタッフがどう関わるのかまで考えることで、
販促物を交流のきっかけにできます。
実施する際は、営業部と配布エリアや担当を整理し、参加スタッフには企画内容と
簡単なあいさつの言葉を共有します。通常業務に支障のない人数と時間で取り組み、
投函を断っているお宅への配布は控えるなど、地域への配慮も大切です。
終了後に、お会いした方の反応や聞かれたことを持ち寄れば、次の企画やご案内にも生かせます。
地域のお客様とスタッフが出会う企画を
全員参加のポスティング活動は、チラシを配るだけの仕事ではありません。
地域の方々に感謝を伝え、スタッフがお客様の暮らしに触れ、ホテルとの接点をつくる活動です。
周年記念の感謝祭に限らず、季節の食事会や館内見学会、地域向けの小さな催しなどにも、
こうした考え方を取り入れられます。
自館では、地域のお客様とスタッフが出会う機会を、どのようにつくれるでしょうか。
販促企画を考えるときには、売上の目標とともに、
「この企画で、地域の方々との距離を少し縮められるか」という視点も持ってみてください。
Ryoukan

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
日々のおもてなし、本当にご苦労さまです。
あなたの宿が、たくさんの出会いと再会に満ちた「千客万来のお宿」になりますように。
どうぞご自愛のうえ、これからも素敵なお宿づくりを続けてください。
